「これまでのあらすじ。」(2002年12月分)

by じょばんに/みわやすたか(miwa@naucon.org)

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12月24日(火)

灰羽連盟

一部リクエストがあったので、とりあえずこれだけ。

今年は年初から 「ICO」 「ほしのこえ」とツボにはまった作品に出会えて、 「ふたつのスピカ」もあったりして、 個人的にはこれだけで豊作の年だったと言えるのですが、 年の終りに来てこれまたすごい作品に出会えました。 レビューは裏日本工業新聞の谷口さんのコメント(12月19日あたり)に詳しいので、 そちらを見ていただくとして、個人的な感想をば。

振り返ってみると、 お話としては灰羽と呼ばれる背中に羽を持った少女たちの成長の断片であり、 普遍的な成長物語の形式を外していない...どころか、 めちゃくちゃ地味でわりとそのまんまという気もしなくもない。 それでいてすごく魅力的に思えるのは、きちんと設定された世界観と きちんとまとめられたシナリオ(もちろんそれを理解しているスタッフも) によるところなのだと思います。 夜中にやってるアニメの中では異色もいいとこで、 奇跡のように思える作品でした。

最終話#13のレキの独白は秀逸で、まるで芝居を見てるようでした。 特に灰羽のような淡々とした雰囲気のアニメーションで、 独白をやるとどうしても浮いて見えてしまうのだけど、 見る側と適度な距離を置くことによって緊張感を持続させてたと思います。 あと灰羽の名前の言葉遊び(?)ラッカ「落下→絡果」、レキ「轢→礫」も 楽しい。残りのネム、カナ、ヒカリ、クウがどうだったんだろうとか、 そういうことを想像する余地があるのはファンにとってうれしいことです。

一番印象に残ってるシーンは、#13でラッカがレキの繭の部屋から追い出されて、 クラモリの絵に挟まれたレキの絵日記を見るところ。 自分の繭の絵に書かれたコメントを見て、ラッカはレキの本当の気持ち、 すなわち葛藤を見たのだと思います。決してひとの心は一面的なものではない、 だから変わるし、また変えることもできるんだ、ということに気づいた。 あのシーンを見ただけで「あ、これできっと大丈夫」と思えたのは不思議です。 その後、レキがいなくなったあと、オールドホームにレキが描いた絵が たくさん掛けられているシーンと共に、 レキの絵に収斂されていく演出は見事だと思いました。 この辺は安倍さんが絵描きだからということもあるのかも。

全13話という非常に限られた時間で、設定された世界に対して 確かに語り足りない部分があるのは否めませんが、 その分何を見せたいのかということを絞りこんだのが、 結果的によかったのかなと思います。

BGMも作品の雰囲気を支える重要な役割を担っていたと思います。 サントラが品薄になるのも納得。 願わくは、こういう部類のアニメーションが少しずつでもよいので、 今後も世の中に出て来て欲しいものです。 でも実際この作品は、安倍さんの強烈な個性に裏打ちされたものだと思うので、 そうそう出て来るものでもないというのも事実なんですけどね...。


12月30日(月)

今年一年を振り返って。

今年の一番の出来事はなんといっても姫の誕生なのですが、 誕生そのものよりは、その前と後で世界が物理的にも精神的にも 全く違って見えてしまうのだと気づいたときの驚きが大きかったりしました。 それまでの自分の人格に加えて、別な人格(それはいわゆるひとの親 というやつなのかもしれません)が生まれて、それが共存してるというのは とても不思議です。(特に僕の場合、ということなのかもしれないけど...(汗;)

不思議で済んでるうちはいいのですが、 自己矛盾が起きるとこれが結構もがかないといけない。 にせ関係でも全く別々な仕事を並行してやるということに追われた一年だったりして、 結局自分は何処へ向かうのかわからなくなってしまうこともありました。 もうちょっと余裕ができたらば立ち止まって考えたいよー、 と思いつつ年末を迎えてしまいました。

結局のところ、 もうちょっと余裕ができる頃というのはおそらくやってこなくて、 ご飯を作りながら、洗濯をしながら、掃除しながら、おむつをかえながら、 ミルクをあげながら、抱っこしながら、食事をしながら、お風呂に入りながら、 寝ながら、プログラムを書きながら、デバッグをしながら、メイルを読みながら、 ウェブを見ながら、酒をのみながら、音楽を聞きながら、アニメーションを見ながら、 漫画を読みながら、ゲームをしながら、日記を書きながら、 笑い、泣き、怒り、悲しみ、考えていかなくてはいけない。 この自分の中の多面性のどうにもならなさ:) に直面したのがこの一年の全てでした。

とりあえず来年は、この何処へいくともしれない自分の手綱をしっかりとにぎって、 ちょっとでも希望する方向へ進めたらいいなぁと思います。 とりとめないですが、一年後の自分に向けてのメモということで。

今年出会ったよい作品

最後のこの一年の感謝を込めて、今年出会ったよい作品一覧を。

漫画:柳沼行さんの 「ふたつのスピカ」

映画:なし。

アニメーション:新海誠さんの 「ほしのこえ」。安倍吉俊さんの「灰羽連盟」

ドキュメンタリー:冷泉彰彦さんの「セプテンバー・イレブンズ 9・11 あの日からアメリカ人の心はどう変わったか」。

ゲーム:SCEIの「ICO」

どうか来年もよい作品に出会えますように。

[2003/2/5追記]識者でもなんでもないよもん(^^;。2週目は別のエンディングらしいですが、僕も2週目途中で挫折してます。ひとまずは次回作に期待... 出るといいな。


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