6月16日(土)

憲法のこと

憲法については高校までで学んだ知識しかなく、結局のところどうなのだろうということを自分の頭で考えてみようと思い、とりあえずいつも楽しくblogを読ませてもらっている内田先生他の「9条どうでしょう」(内田樹、平川克美、小田嶋隆、町山智浩・毎日新聞社)を読んでみた。

9条どうでしょう

が、これはあくまで世間話を域を出ておらず、他人の意見としては参考になるが、結局のところどうなのだろうということを考える本ではなかった。したがって、論文読みの鉄則に従いそこから参照されていた以下の2つの本を見繕って読んでみた。

「日本国憲法を生んだ密室の九日間』(鈴木昭典・創元社)

1993年に朝日放送のドキュメンタリーとして放映された同番組のディレクターが、取材資料をもとに書き下ろしたもので、GHQ民政局で憲法草案作成に携わったメンバーへのインタビューとエラマンメモと呼ばれる議事録を中心に、GHQ草案の作成の過程を再現ドラマ仕立てで書いている。アメリカ側の視点を中心に、占領政策の一環としてあった憲法改正に対する実情が見て取れて興味深かった。

「新憲法の誕生」(古関彰一・中央公論社)

憲法研究者が現日本国憲法制定の一部始終を主に日本側の視点から書いている。前者の著書ではあまり拾いきれていない戦後の世相やGHQ草案の日本化の駆け引き、9条の芦田修正にまつわる話やなぜ改正議論が制定後40年も経って(1989年の著作)未だに進んでいないのか、というところまで言及があるのが読み応えがあった。

適当に選んだわりには、この2冊はグッドチョイスだった。読みやすかったし、アメリカ側と日本側のそれぞれの視点が読めたのはよかった。それに文句なしに面白い。 こんなに面白いものとは思わなかった。今馴染みのある憲法は、ひとまとまりの条文として一体のものとして制定されたのだと思っていたのだけど、ずっと寄せ集めのモザイク模様であったこと、また戦後のあの時期にはもっと違った条文や文面が制定されていたかもしれない、という可能性が無限に広がっていた(少なくとも日本人はそう思っていた)ことがわかっただけでも収穫だった。

いま報道されているような憲法議論は、その大半が9条の議論につくされているにも関わらず、国際情勢への影響についての議論が足りない気がする(護憲にしても改憲にしても)。そういうものの考え方は、終戦直後とまったく変わってないか、むしろ退化しているのではないかと思えるほど。

ま、とりあえず他の本ももう少し読んでみようと思います。