2004年12月 7日(火)

「強度ある物語」を求めて

ユリイカの12月号は「特集*宮崎駿とスタジオジブリ」なのだけども、そこはすっ飛ばして新海さんのインタビュー記事だけを読んでみた。「雲の向こう、約束の場所」の制作意図などがまとまっていてなかなかに興味深かったのだけど、タイトルに付けられた「強度ある物語」というキーワードでインタビュアーが内容をまとめたかったのかどうなのか、ちょっと的外れではないかという部分も散見された。

特にインタビュアーの「振り返ってみると、今年公開の大作長篇アニメーション-『イノセンス』『スチームボーイ』『ハウルの動く城』-は三作とも共通して、ヴィジュアルの方が優勢で、物語の力で観客を巻きこもうという意思が薄かったと思うんです云々」というくだりは、正直目が点に...。『スチームボーイ』は観てないのでなんとも言えないけど、『イノセンス』にしても『ハウル』にしてもストレートな物語に丁寧に沿うように、ビジュアル面ではかなり抑えた表現になっていたと思うのだけど。特に『ハウル』のキーポイントは、後半になってソフィーが老婆になったり若い姿になったり目まぐるしく描写が変わるところで、あれこそヴィジュアルが物語をつむぐアニメーションの醍醐味であるところなのに。動く城の描写なんてオマケ。えらいひとにはそれがわからんのです。ってことはないと思いたい。

新海さんの「雲の~」だってヴィジュアル面では全然負けてないと思うのだけど、残念ながら圧倒的に物語の部分が弱いです。新海さん自身のコメントにあった「モノローグをダイアローグにしようとした」という挑戦はあくまで挑戦であって、なんというかまだまだ足りてない部分があるんじゃないかと思えたり。「彼女と彼女の猫」にしても「ほしのこえ」にしてもアニメーションにモノローグ、つまり一人称視点を取り入れたところがとても斬新でいわゆる新海テイストを形作っていたのだけど、その部分を薄めた結果、ヴィジュアル部分だけが新海テイストを残すものになってしまって、ちょっとバランスが悪かったんじゃないのかなと思います。でもその辺もひっくるめて新海さん自身が「それでもやっておきたかった」とコメントしているので、まだまだこれから楽しませてくれるのではないかと。いや、ぜひ次も恥ずかしいの作ってください(笑。期待。