読書日記(黄金の羅針盤)
by 鈴木 宏枝
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黄金の羅針盤(おうごんのらしんばん)
原題The Golden Compass読んだ日2001.8.4
著者Philip Pullman(フィリップ・プルマン)訳者大久保寛画家(N/A)
出版社新潮社出版年月日1999.11.5原作出版年1995
感想 再読。以前読んだときは、ダイモンという発想のユニークさと、それぞれのキャラクターの魅力に一番関心がいった。今回強く感じたのは、実在の町や国家の上にかぶせるように構築されている世界。クマや魔女や辺境民族が入り乱れているところは、よほど巧みに書かないと陳腐なものに思えてしまうだろうが、とてもリアル。このようなファンタジー世界を読むのは、初めてではないかと思う。また、ジプシャンやオックスフォード大学の世界も、一種めくるめく別世界である。
 肝っ玉母さんのマ・コスタや、白熊のイオレクがいい。ライラとの計略の場面では、胸がすく思いがした。自分が何者か、ということをしっかり知っている者は、クマでも人間でも、強い。
 ダストをめぐる聖職者と科学者の構図が見えたとき、作品が反転して、途方もない野心家のアスリエルと、「子ども」の象徴ライラが、どのような方向に向かっていくのか、再び分からなくなる。イギリスから北極へ。氷とオーロラのこんな世界は、まさに「物語」にふさわしい。


鈴木 宏枝
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