読書日記(向こう横町のおいなりさん)
by 鈴木 宏枝
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向こう横町のおいなりさん(むこうよこちょうのおいなりさん)
原題(N/A)読んだ日2001.7.14
著者長崎源之助(ながさきげんのすけ)訳者(N/A)画家(N/A)
出版社偕成社出版年月日1975.6原作出版年(N/A)
感想 昭和10年代の、あまり上品ではない子供たちの描写がリアルで(あたりまえ? 長崎さんが現実に体験していた路地やお稲荷さんの境内での体験があったのだろう)、生き生きとしていて、一気に読んでしまった。単に子ども時代の讃美をしているのではなく、子供たちとまともにぶつかったり、バカにされたり、情けなかったりする大人たちも、子供の側にいるようで、そして、その背後に左右にいつも落ちている「戦争」に、やはりついつい目がいってしまった。
 どんがらぴーという言葉に、ずっとデジャブを感じていたのだが、宮川健郎さんの『現代児童文学の語るもの』で、<ネガとポジの反転>−−坂道を下っていく先から、にわかに戦争が迫ってくる−−といわれていたことだった。ネガとポジの反転という発想については、作法を考える上での大きな啓発になったけれども、この作品でいえば、最後の一行で鮮やかにネガ−ポジは反転するのはやはり、そこに至るまでの、じわじわとした流れがあってこそだと思う。
 この作品では、強い子も弱い子も、ガキ大将もみそっかすも、まとめてお日様の下にいる。でも、それを、失われたものへの郷愁ではなく、「今」にあっての子供の共同体はいかに、につなげたい。


鈴木 宏枝
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