読書日記(Battle Royale バトル・ロワイヤル)
by 鈴木 宏枝
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Battle Royale バトル・ロワイヤル(ばとる・とわいやる)
原題(N/A)読んだ日2001.4.27
著者高見広春(たかみこうしゅん)訳者(N/A)画家(N/A)
出版社太田出版出版年月日1999.4.15原作出版年(N/A)
感想 さて、どう書いたらいいだろう。舞台となっている1997年の大東亜共和国は、すべてが統制され、準鎖国状態の全体主義国家である。全国でランダムに選ばれた中3のクラスが、無人島で行わねばならないバトル・ロワイヤル(最後の一人になるまでの殺し合い)は「プログラム」と呼ばれていて、最後の一人以外、そこから逃げることはできない。作品では、プログラムの中で、それぞれの15歳がどんな背景を持ち、どう死んだかが描かれていく。
 登場人物と死に方をそれぞれ組み合わせて、とにかく場面を切っては繋いでいく印象。ミステリー小説賞に応募された作品らしいけれど、最後のどんでん返しだけがミステリーというものだろうか(推理小説・ミステリーはほとんど読まないので、分からない)。
 バトル・ロワイヤルという大筋はともかく、その前提となっている「国家」や「巧妙に操作されながら付和雷同している国民」などが、どうも弱く、北朝鮮と日本を適当に混ぜているだけに見える。何も、日本に重ねなくても、まるっきり架空の話にしてもいいのに、妙なところでブルース・スプリングスティーンや「イマジン」の曲があって、中途半端だと思った。ロックが反体制というのも、うーん。
 殺しのシーンの残酷さに関しては、本当に怖いところは多少読み飛ばしながら…それでも、怖いイメージにはとりつかれそうではあるが、それほど違和感はなかった。でも、特に作家が意識して選んだと思える「15歳」という年齢なのに、彼らが全然15歳に見えず、むしろ、15歳という記号を背負った大人に見えた。川田の超人ぶりにしても任侠の世界のよう。
 光子は、9歳のときに3人の男にレイプされて、家庭でも酷い目に遭って、相談した学校の先生にもレイプされて…と、なんだか、下手なポルノの背景を背負わされた美少女である。そういう状況から、光子のように、性を武器にした冷酷な女ができたというのは、百歩譲って理解できるにしても、その「背景」が半ページくらいで書き飛ばされているので「は?」と思った。というか、<精神的に死んだ>ことにリアリティを持たせるための設定なのだろうが、その設定だけが浮いていたように思う。それから、神の戦士ぶって死んだ女の子も、唐突だったような(これは単に、変身願望をもつヤオイ系の揶揄だろうか)。桐山は、事故で頭に破片が刺さって感情を持てなくなったから、殺人マシーンになってしまった。
 状況や筋を書くことはできても、この作家は、人物を描くのが得意ではないのかなぁ。また、クラスの中で、どんどん生徒は減っていくのだけど、友情はカケラもないわりに、みんな、男女の結びつきにからんで動いていく。15歳というのは、そういう年だろうか。でも、そればっかりというのも変な話で、要はおじさんとおじさんの考える女のコたちのドラマという気がしてならない。
 酷評してしまったが、つまり、私が「リアリティ」と感じる心境や人とのつながりに欠けていたというだけで、こういうのがはまる、映像化してみたいと思う、という人がいるのも分かる。この作者のスタンス自体は、実はけっこう好きなのだ(人情の世界?信じる/信じないで疑いつつ、信じる方に、結局は傾いていく流れ)。彼は、簡単な言葉(例えば「悲しかった」とか「泣いた」とか)で<説明>し、先を急ぎすぎたのではないか。そして、登場人物を、あまりに機械的に、そして、「15歳」をオジサンに都合よく扱いすぎたのではないか。


鈴木 宏枝
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