読書日記(ニライカナイの空で)
by 鈴木 宏枝
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ニライカナイの空で(にらいかないのそらで)
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原題 | (N/A) | 読んだ日 | 2000.8.19 | ||
著者 | 上野哲也(うえのてつや) | 訳者 | (N/A) | 画家 | (N/A) |
出版社 | 講談社 | 出版年月日 | 2000.6.15 | 原作出版年 | (N/A) |
感想 | 読み始めて止まらなくなった。すごくおもしろかった。東京オリンピックの年を舞台に、正真正銘の腕白坊主と、そんなガキどもに容赦しない大人たちのいた時代。青山育ちの立花新一(ぼく)は、相場師の父の破産で、九州の炭鉱町に預けられることになる。炭鉱夫の野上源一郎はそれはもうおっかなく、ひ弱な新一は、ドンゾコな気分になるのだけど、その家の竹雄(竹ちゃん)とは兄弟のように仲良くなって、乱暴だけど生き生きした日々が始まる。 ニライカナイという題に、当然沖縄の話かと思ったら、舞台は筑豊。竹ちゃんが、またいいキャラクターで、1年越しの計画を実現させて、新一と一緒に伝馬船をヨットに改造するのだけど、そのヨットの名前がニライカナイ号というのだ〔夏休みに預けられた親戚のおじいちゃんとおばあちゃんが沖縄の人(ヨナ爺とヨナ婆)だから〕。ニライカナイ号の出航。初島まで、潮の流れをそのまま感じられるような帆走は、ランサムも思い起こさせる。なんだ、イングランドの優雅な休暇じゃなくても、ここにこんなカッコイイヨットがあるではないか!しかも、自分で作るのよ〜。このヨットの冒険の顛末は、新一の八ヶ月の中でも大きな思い出となり、ラストにつながっている。 登場人物がみんなぴんときりっと立っている。おっかない野上源一郎、太陽のような史郎兄ちゃん、優しいおばさんに、知恵の宝庫のおじいちゃんたち。もちろん、炭鉱町の子供たちはいつだって、パワフルそのものだ。また、すっかり溶け込んでも、やはり東京からのよそ者であることを意識せざるを得ないときもある新一の心理、来年は中学生=今が子ども時代であるという意識、竹雄と新一の友情、様々なテーマとエピソードがからみあって、物語り全体がひきつける力を持っている。そして、九州弁がほんとに力強く立ちのぼっている。 あと、この話は、九州=男の土地を舞台にしているだけあって、下の話がいっぱいだし、筋を通すこと、しゃっきりすること、世界で一番辛い炭鉱夫をして家族を養っていくことなど、男の骨太さがむんむんしている。東京育ちの新一のひ弱さが自分に重なったりして。 黄金の昭和30年代を舞台にした、たくましい子どもの話はほかにもありそうな気もしますが(『兄ちゃん、ぼく反省しきれません』も似た系譜か?) 、似てる似てない関係なく、ほんと、素直におもしろかったです。 |