読書日記(ティーパーティーの謎)
by 鈴木 宏枝
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ティーパーティーの謎(てぃーぱーてぃーのなぞ)
原題The View From Saturday読んだ日2000.6.20
著者E.L.Konigsburg(カニグズバーグ)訳者(N/A)画家(N/A)
出版社岩波書店出版年月日2000.6.16原作出版年1996
感想 Very Good!!クイズはひとつのオープンにすぎない。普通の子供の物語とは。シリントン荘とシンさんが、カニグズバーグ一流のオトナ。アフタヌーンティもいけてる。Tバックより数段おもしろかった。素晴らしい。
 私は、今、周到につむがれて、何度も読み返して納得してしまうような物語を読むのが楽しいモード。原題のviewという言葉に、わくわくする。
 土曜日のお茶会は、4人の子どもたちが、それぞれの大切なものを分かち合いながら、「4人のなかよしグループ」以上のものになる時間。彼 らの一人称と、作家の三人称が、緻密に組み合わさり、土曜日の英国風ティーパーティと、ニューヨークのクイズ大会が重なっていく。
 アフタヌーンティ大好きな私は、アメリカで、かようにイングリッシュなものとして、ひとつの非日常空間を生み出す場としてのアフタヌーンティ が嬉しい。もちろん、小さいキュウリのサンドイッチや、おいしい紅茶(肝要だが!!)だけではだめで、すばらしきかな、シリントン荘と、シンさんな のだ。
 舞台は、クイズ大会の決勝・・・といっても、博学を競うということで、かなりハイレベル。私は、全然わからなかった。
 博学競技大会は、それぞれに主題を抱える四人の子どもたちの「帰港」を、はなたれたものにするためのしかけ。献辞には、<力の差をのり こえて巨人に勝ったダビデにささげる>とある。巨人とは、決勝で負かしたマクセル校の8年生ことなのだろうけれど、彼らがどのくらいすごい のかということはあまり書かれていないので、実は、あまり巨人という感じはしない。
 サルガッソー海や、センチュリー・ビレッジと、スクールバスと、悪意から旅してきた四人がそれぞれにのりこえてきた、葛藤もまた、「思春期 前期」の彼らにとっては巨人だったのだろう。クイズは、結果でしかない。物語のクライマックスは、むしろ、四人の手足がハムに向かって突き 出された、あの芸術的な一瞬にある。ビバ、ソウルズ。
  多様性とか、民族集団、マイノリティのことは、ニューヨークの自明として、あたりまえの土台に思われた。でも、海を越えてきた、ジュリアン は、やはり、外部からきたという異質性によってこそ、ソウルズの中心たるべき少年だと思う。彼は、新しい風を持ち込みつつ、求心力になっ た。
 シンさんの見通す目が、オリンスキー先生をもすくい上げていく。オトナになってから、巨人に向かっていくのは、よけいにややこしい。身障者 なんてあたりまえの社会で、それでも、彼女は、それゆえの緊張と葛藤を抱えている。
 横田順子さんの「カニグズバーグの作品には、必ず内的基準を達成している大人が出てくる」という論に、私は影響されてしまっているのだ けど、子どもたちをひとつ上から見守るオトナは、当然シンさんなのだろう。でもって、そちらの側に、ジュリアンも半分入っている。『クローディア の秘密』のフランクワイラーさんのように、何もかも知っているおばあちゃんがいるのではなく、むしろ、シリントン荘という無言の場が、やさしさ を引き出していっている。先生という立場の、オリンスキーも、ひかれて導かれる側にあり、大人と子供の関係は、45度くらい回転しているよう だ。
 安心できる仲間を求める心。自分と学校社会と友だちに向く心。本当に普通の子どもたちから、こんなカッコイイ物語をつむいでいくカニグズ バーグは、ああもう、大好き。
 カニグズバーグはかっこいいよ。言葉がぴんと立っていて、きりりと上品。難しい言葉遣いは、子どもを描く上での、カニグズバーグの潔さな のだろう。


鈴木 宏枝
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