Gelsominaの本の散歩道(おとなのための星の王子さま)
by Gelsomina
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おとなのための星の王子さま(おとなのためのほしのおうじさま)
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原題 | (N/A) | 読んだ日 | 2004.12 | ||
著者 | 小島俊明(こじまとしあき) | 訳者 | (N/A) | 画家 | (N/A) |
出版社 | 筑摩書房(ちくま学芸文庫) | 出版年月日 | 2002 | 原作出版年 | (N/A) |
感想 | 本書は『星の王子さま』のたいへん良心的な注釈書です。 わたしが岩波版で戸惑いをかんじた「時間をむだにする」を含む箇所を、小島氏は、「きみの薔薇の花がそんなにも大切なものになったのは、きみがその薔薇の花のために時間を費やしたからなんだよ」と翻訳しています。 また他の箇所に「飼いならす」という重要なキーワードがありますが、これについても小島氏は、作者は「飼いならす」という日常的な言葉を使いつつそこに詩的で新しい意味を盛り込んでいると説き、「絆を創る」「心のつながりを創る」という語を当てています。 小島氏自身による翻訳はシンプルでわかりやすく、また詩的でさえあります。部分訳ではありますが、それぞれに非常に示唆に富んだ解説が付されています。次のような箇所は本を読んだときに記憶に残りませんでしたが、この度は深くかんがえさせられました。 ――「ぼくはね」と王子さまはなおも言いました。「ぼくは一輪の花をもっていて、毎日水をやっていたんだ。三つの火山を持っていて、毎日煤はらいをしていた。休火山の煤はらいもしていた。いつ火をふくか誰にもわからないんだ。ぼくが持っているってことは、火山にとって役に立つし、ぼくの花にとっても役に立つんだ。」――(小島氏訳) また、サン・テグジュペリがこの作品を通して、文学におけるリアリティー、詩的リアリティーの復権を要求していたという論にも、目を見開かされるおもいがしました。『星の王子さま』のそばにいつも置いておきたい本です。 |