読書日記ぼちぼち(家守綺譚)
by ぶなの木
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家守綺譚(いえもりきたん)
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原題 | (N/A) | 読んだ日 | 2004.8.7 | ||
著者 | 梨木香歩(なしきかほ) | 訳者 | (N/A) | 画家 | (N/A) |
出版社 | 新潮社 | 出版年月日 | 2004.1.30 | 原作出版年 | (N/A) |
感想 | 英語学校の非常勤講師をしながら、売れない文を書いている綿貫征四郎は、亡くなった親友の高堂の父親に頼まれて、空き家となった高堂の実家に住まわせてもらいながらこの家の守をしている。 この古い家とそれを取り巻く自然の佇まいがいい。いつの時代のどこなのか、はっきりとはわからないが、私は勝手に夏目漱石の物語の世界を当てはめていた。 死んだはずの高堂が床の間の掛け軸の絵の中からたびたび出てきたり、サルスベリの木に惚れられたり、飼い犬のゴローは河童と仲良くなったり、白木蓮がタツノオトシゴを孕んだりと、尋常ならざる出来事が次から次へと起きてくる。 まかり間違えばホラーっぽくなるのだが、怖いという感じは全然なく、むしろ楽しいのだ。 読んでいる間、私はこのしっとりとした異界に浸っていた。 もう、枯れてもおかしくないほどの状態のサルスベリが、綿貫がきてから、いままでにないくらい、たわわに花を咲かせたり、ダリヤに心動かされた綿貫にやきもちを焼いたりする場面が妙に心に残った。 サルスベリはわたしの大好きな花である。毎年会いにいくサルスベリの木があるほどだ。 鎌倉の報国寺の駐車場の前の大きな屋敷に咲いているサルスベリの花は見事だ。8月の暑い日、蝉時雨の中、そこだけひんやりとした空気の孟宗竹の林の中で、抹茶を一服いただきにいくのが楽しみなのだが、その時にこのサルスベリを見るのも楽しみのひとつになっているのだ。 あのサルスベリもだれかに、懸想して、やきもちを焼くのだろうか。 |