読書日記(森有正先生のこと)
by さかな
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森有正先生のこと(もりありまさせんせいのこと)
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原題 | (N/A) | 読んだ日 | 2004.2.18 | ||
著者 | 栃折久美子(とちおりくみこ) | 訳者 | (N/A) | 画家 | (N/A) |
出版社 | 筑摩書房 | 出版年月日 | 2003.9.25 | 原作出版年 | (N/A) |
感想 | おすすめにチェックはいれたものの、さて人に薦めるとなると誰かしら。 ルリユールやブック・デザイナー、製本など個人的にわくわくする言葉を私は栃折久美子さんの本で知った。その栃折さんの――ありていにいえば恋の話が書かれている。森有正先生とゆかりの深い出版社につとめその縁で顔をあわせた。それから森有正著作の本を読みたくなり、ものすごい勢いで本を「食べ」始め、バカ食いで壊れたのは精神の構造だったと書いている。硬質な文章で書いているけれど、やわらかく書くと恋に落ちたのだ。しかしこの表現は微妙なずれがあるかもしれないが。相手の方が亡くなるまでの10年。それから27年たち、栃折さんは自分の「ルリユール工房」を後輩に譲り、自分自身の「アトリエ兼書斎」に戻る。その戻った場で最初の仕事をこの本を書くことに決めていたそうだ。出会いは1967年9月、栃折さんの仕事が軌道にのるまえのことだ。森先生にたのまれた事をきっちりとこなし、信頼を得、心をゆるされるようになる。そうしながら、栃折さんは自分の仕事も形にしていく。それは忙しさと比例して。 終わりは森先生の死だが、栃折さんが日々忙しくなり、1974年あたりから、文章にそう書いていなくても関係が遠くなっていく様が伝わってきた。 「お嫁さん」になったかどうかはともかく、先生の傍で暮らしていたら、「破滅」しないまでも、半端なことではつとまらない秘書役に、力をつくすのを生きがいと感じてしまい、自分の仕事はろくにしなかったのではないか。ここでいう仕事とは、自己表現、自己確認、自分が生きていること、生きてゆくことを、知るためのもの、という意味である。 |