Yan’s 読み記(シールド・リング)
by Yan

シールド・リング(しーるどりんぐ)
原題(N/A)読んだ日2004.1.7
著者ローズマリ・サトクリフ(ろーずまりさとくりふ)訳者(N/A)画家(N/A)
出版社原書房出版年月日2003.12原作出版年(N/A)
感想ノルマン人がイギリスを征服したことを
ノルマンコンクェストというのは「ロンドン」という
大長編を読んだときに知った。
イギリスでノルマン人の征服を受けなかったのは
スコットランドと湖水地方だけだったらしい。
シールド・リングと呼ばれる盾の輪を心の中に持ち
結束してノルマン人に抵抗したのが、
ノルウェーからイギリスにやってきた
ヴァイキングの子孫たちだ。
かつては征服者だった彼らが次には征服される者になる
これは歴史の悲劇かも知れない。
湖水地方の谷の奥で一族を指揮し戦う三人の男。
族長のブーサル、アリ・クヌードソン、族長の弟でアリの養子エイキン
友好関係を結ぶためにアリがノルマン人のラルヌフ・ル・メスカンのもとに 交渉に行くのだが、相手は彼を虐殺して帰す。
それが谷に住む人の結束を強めて「シールド・リング」という
心の砦になるのだ。どんなにシールドリングの秘密を強迫されても
誰も自白しない、そういう鉄の結束。
30年間その結束を守り、最後の戦いにノルマン人を追い払う。
少数の部族で、地理を生かして敵をおとしいれる知恵を働かせたのが
ビョルンだ。竪琴弾きの養父ハイトシンから竪琴のわざを引継ぎ
「剣の歌」を歌う彼は、いるかの紋章つき指輪を引き継ぐものだった。
湖水地方というとピーターラビットの故郷で
ナショナルトラスト発祥の地。なだらかな丘とたくさんの湖の
美しい土地に荒々しくて粘りづよい戦いの歴史があったとは
おどろきだ。他者に征服されることを潔しとしない人々
自分たちの生活を守り抜こうとする人々の心。
それは土地を昔のままに守り抜こうとするナショナルトラストに
引き継がれているような気がする。
この地で飼われていた羊の毛を脱色せず
そのまま使ってヴァイキングの旗に
オオガラスの絵を刺繍する場面があったが
あれはポターさんが飼っていたハードウィック種の羊なのだろうな
と思ったし、ノルマン人を撹乱させた「どこにも行かない道」が
もしか今も残っているのかもしれないと勝手に想像している。 族長ブーサルの名前がバターメア湖の名前で 残っているというらしいから。 ビョルンが戦いの後に歌うあらたな始まりの歌。 心に砦を持ったものが引き継いでいく新しい歌 いい終わりかただ。


Yan
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