Yan’s 読み記(エルフギフト 下 裏切りの剣)
by Yan

エルフギフト 下 裏切りの剣(えるふぎふと げ うらぎりのつるぎ)
原題(N/A)読んだ日2003.11.5
著者スーザン・プライス(すーざんぷらいす)訳者金原瑞人画家(N/A)
出版社ポプラ社出版年月日2002.7原作出版年(N/A)
感想うりふたつの弟ウルフウィアードと対決し 
弟に重傷を負わせたエルフギフトが選んだ道は、
サクソンの神の加護を失うことの引き換えに弟を生き返らせることだった。
父王の遺言どおりに次の王として立ったエルフギフトは、
異母兄のアンウィンと戦をしなければならなくなる。
アンウィンの妻と子どもを殺さずに助ける場面、
ウルフウィアード の看護をする場面などでエルフの子としての 癒しの力を発揮するのだけど、
自愛に満ちたとはいえない態度だ。
この巻ではアンウィンの息子ゴッドウィンの憎しみがあらわになっている。
父を追放したエルフギフトへの憎しみ、
キリスト教を捨ててサクソンの神への信仰に戻ってしまった母への恨みがなまなましく描かれている。
サクソンの多神教がキリスト教に追われようとしている時代背景も書かれていて興味深いのだが、
ケルトのサムハインの祭りが見事にキリスト教ではハロウィン、サクソンでは イングの祝日と重なっている。
この日が アンウィンのキリスト教軍とエルフギフトの サクソン軍の休戦の日になるのだが
悪者のアンウィンは停戦協定を破って エルフギフトを殺してしまう。
殺し方のすさまじさは、クーフーリンの最期など問題外のすごさだった。
「血染めのワシを刻む」と称して、 生身の人間を斧でずたずたにするという 処刑の仕方だ。
サクソンのやり方でエルフギフトを殺したアンウィンもさすがに同盟者の 信頼を失う。
そしてサクソンの筆頭神オーディンが化身した竪琴ひきの男ウドゥによって
復活したエルフギフトに、最後に殺されてしまう。
エルフギフトの復活のシーンがまた ものすごく恐ろしい。
死者を呼び起こし 戦士として動かすというところなど ケルトの黒い大釜を思い出させる。
悪者は滅んだのに、サクソンの平和は訪れないというのが筋のようだ。
このあとで運命によって死期を定められた エルフギフトが永遠に消え去るらしい。
裏切り、復讐、死、悪、狂気
いろいろな言葉を使っても言い表せない
恐ろしい世界、人がどこかに持っているもの
それを表に出さないでいるうちは平和だ。
私たちが生きている現代がこういう時代に 移行していくような気がしてならないのだが
そんなことをほかの読者は考えるだろうか。


Yan
[Mail] tappeny@mbj.nifty.com

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