読書日記(風の子レラ)
by 鈴木 宏枝
[WebSite] Hiroe's Home Sweet Homepage

風の子レラ(かぜのこれら)
原題(N/A)読んだ日2002.3.13
著者AKIRA(あきら)訳者(N/A)画家(N/A)
出版社青山出版社出版年月日2001.8.10原作出版年(N/A)
感想 母一人子一人で生きてきたのだが、母親を脳溢血で亡くしてしまった小学6年生のレラ。アイヌの血が流れ、不登校気味である。お葬式後、行方不明だった父親カンナが現れ、二人でアイヌモシリで暮らし始める。カンナの育ての親チュプ(太陽)婆さんの知恵やアイヌの文化を護り伝え、カムイ(神)と共生していこうという仲間たちに出会い、レラは自分の中の野生や自然・神と共にある人間の営みを我が物にしていく。だが、村はダム建設で揺れていて、彼らのムーブメントも理解されない。
 荒々しい勢いと、表現したいsomethingをいっぱいに抱えた作品で、上手ではないのだけどその迫力に圧倒された。作者は作家ではなく美術家で、たしかに、いくつかの挿画が物語以上に雄弁だったと思う。言葉で説明しすぎている部分、言葉が足りなくてもどかしい部分。だけど、レラだけでなく、まわりのすべての登場人物にも、意外に、単なるプロット上のキャラクターにとどまらない奥行きがあってよかった。
 生き死にを扱う要素が物語の中では大きく、そして生々しくリアルである。チュプ婆さんにふとアマナ(「<幻の馬>物語」)を重ねてしまう。アマナよりも希望を込められたラストだけれど。


鈴木 宏枝
[Mail] hiroe_ms@nifty.com

$Id: books.cgi,v 1.42 2010/09/23 08:35:15 yasutaka Exp yasutaka $